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地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

名リーダーの名言・金言・格言・苦言集(18)『“長”の字に惑わされるな』(松永安左衛門)『雑音を聞き分けよ』(松下幸之助)

   

<名リーダーの名言・金言・格言・苦言
・千言集(18)            前坂 俊之選
 
 
 
 
 
◎気を観て、小損大利
 
市村 清(リコー、三愛総帥)
 
 市村はこう述べている。「現在は損であっても、三年先か、あるいは五年先にピントを
合わせて、小損大利をやれ」と。
 
 未来を的確に見通すことは非常に難しい。世の中の流れを、しっかり研究して、絶えず
注意し、またチャレンジしなければ現状維持の方が楽だ。リスクも小さい。特に、小さな
柔軟な組織ならば別だが、大組織になるほど、未来へ向けての予測とチャレンジには一層
難しくなる。
 
 市村は「気を観よ」「一歩先んずるためには、いつも時間的な志向を持っていないとダ
メ」ともよく言っていた。マーケットのニーズが出てきてからではもう遅い。その気配を
いち早く観づくように、絶えず注意しておく。
 「気を観て」「小損大利」に行動するのだ。
 
 
◎心訓
 
 福沢 諭吉(慶応義塾創始者)
 
 一 世の中で一番楽しく、立派なことは一生涯を貫く仕事を持つことです。
 二 世の中で一番みじめなことは、人間としての教養がないことです。
 三 世の中で一番さびしいことは、する仕事のないことです。
 四 世の中で一番醜いことは、他人の生活をうらやむことです。
 五 世の中で一番尊いことは、人のために奉仕し、決して恩に着せないことです。
 六 世の中で一番美しいことは、すべてのものに愛情を持つことです。
 七 世の中で一番悲しいことは、ウソをつくことです。
 
 
●“長”の字に惑わされるな
 
  松永 安左衛門(電力の鬼)
 
 自分の念願しているポストに、つけなかったり、同僚が、自分より先を越して係長、課
長、部長になったからとて、一喜一憂し、くさったり、投げやりになったりする、人間が
いかに多いか。長とつく人間には必要以上にペコペコする。下の者には横柄な態度を取る
 “長”の字に惑わされているのである。
 松永は言う。
 「サラリーマンは、サラリーマンとしての責任を果たす。イヤ、サラリー以上のものを
果たす。それで立派な成功ではないか。さらに仕事を通じて、社会有用の存在となってい
れば、それで十分のはずだ」と。
 
 
 
●“良い品を安く便利に”提供すれば、アメリカ
からも買いにくる
 
青井 忠治(丸井創業者) 『青井忠治が語る私の商いのやり方、考え方』
 
 青井は昭和六年(一九三一)二月に二十六歳で、東京・中野に「丸井」の前身である「
丸二商会」という、家具の月賦販売店を開いたが、昭和恐慌のまっただ中で、一週間たっ
ても客は来なかった。どん底の中で、どうすれば売れるか、必死になって考え、あらゆる
ことを試みた。そして、売れる店の条件をつかんだ。
 
 一 店内、店の外回りなどが、常に掃除されていて、清潔そのものであること。
 二 商品がいつもピカピカに、磨き上げられていること。
 三 店員がいつも、店内を動き回っていること。
 この三つの条件が揃えば、自然と活気ある店になる。
 青井は言う。「いつでも、世の中がどんなに不況でも、お客さまの立場に立って、良い
品を、お安く、便利に提供すれば、必ず売れるものです。アメリカさんでも買いにくる。
電車に乗っても、買いにくる。これは商売の大原則です。
 
 
●人間がしっかりしておれば、金は自然に集まる
 
  出光 佐三(出光興産創業者)     『出光佐三語録』
 
 私は「金持ちの金は借りるな。人間がしっかりしておれば、金は自然に集まる」と言っ
ております。創業後七、八年(大正中頃)は死ぬか生きるかという、非常な苦しみを味わ
った。その間に従業員が覚えたことは、人間がしっかりして、力を合わせておれば、どこ
からか金は出来てきて、難関は突破していけるということです。それが『人間が資本であ
る』という言葉になったわけです。
 
 私は銀行からしか、金は借りないということでやってきました。当時の銀行は、担保が
なければ金は貸さない。けれども『声なき声』があったのです。
 
 『あの出光商会は変わっておるぞ。従業員がみなしっかりしていて、火の玉のように一
致団結しておる。あれを育てようではないか』という声があったのです。その『声なき声
』に守られて、私は主義方針を貫き通して銀行以外の金は借りなかった。

 

 
  ●今日成功する人が明日成功すると断言できない
 
 小林 一三(阪急グループ創業者)   『運命を開く』
 
 古い型の人間は、これからの時代に通用しなくなった。新しい型の人間の世界に、変わ
りつつある。過去において成功したような性格、能力が必ずしも、今日成功するとは限ら
ない。また、今日成功する人が、必ずしも明日成功するとも断言できない。
 
 現代のように、世の中の流れの早い時代には、特にそれが激しい。新しい時代のふるい
目は、どしどし古い人間をふるい落としていく。昔、尊重された人間も、顧みられなく落
伍していく。
 
 すべてのものが変わっていく時代なのだ。中でも、経済組織の激変は、急角度に来るに
相違ない。旧式な考え方から脱し得ない人々は、途方に暮れる時が来るであろう。
 
 世の中は変わる。時勢は変転するから、どう変わるか早く見通しをつけ、それに適応し
ていく人が勝利者となる。古い常識は役に立たなくなる。今までは常識がものをいったが
、これからは専門的知識の世の中だから、常識を頼りの人は、まごつくであろう。
 
 
 
●雑音を聞き分けよ
 
松下 幸之助(松下グループ創業者) 『山本五十六と松下幸之助』
 
 松下は衆知を集めることでは天才であった。
そのことを、端的に物語っていたのは彼が
“聞き上手”であったこと。これが、見るべき学歴のなかった彼が日本のみならず、世界
でも第一流の技術者集団を率いて見事な実績をあげることができた主因であった。
 
 松下は実によく人々の話を聞いた。ほとんどの大企業のトップは、部下の報告を聞く時
でも、聞くよりも話すことが多い傾向がある。しかし、松下は事業に直接関係のある人は
もちろん、ない人でも素直に話を聞いた。部下と対話する時間が一時間あれば、四、五十
分は聞く方に回っていた。
 
 その“聞き上手”な松下はこう話す。
 「物事を決断する際に気をつけねばならぬのは、社の内外から聞こえてくる雑音である
。雑音にも耳を傾けなければならないが、それにとらわれて心を乱されてはいけない。必
要なのは雑音を聞き分けること。それが出来ない経営者は誤診しやすい」
 
 
 
●商機を逃すな、即刻主義でやれ
 
 大倉 喜八郎(大倉財閥創業者)
 
 大倉は幕末の“死の商人”。戊辰戦争で、官軍の御用商人となり、巨利を得て、財閥へ
の第一歩を築いた。喜八郎は鉄砲の注文があると、横浜までカゴを飛ばし、途中に追いは
ぎや強盗が出るため、カゴの中で六連発ピストルの引き金に指を入れて警戒、カゴの天井
に数百両の金をくくりつけて、カミナリのようにすっ飛んで行ったという
 
 大倉の商法は「このようなスピード主義であり、頼まれるとすぐその命を果たした。“
明日主義”や後回しには全くしなかった」と「実業立身伝」に記されている。
 本人はこう述懐している。
 
 「私の今日ある、にいたらしめたものは、主として商機をうまくとらえたからである。
戦争をするには鉄砲や弾薬が必要である。千載一遇の絶好の商機をとらえた」(「致富の
鍵」)
 チャンスを見事にとらえ、即決主義でものにしたのである。
 
 
 
 ●まず己身を正せ
 
  丸田 芳郎(花王社長)            『私の転機』
 
 丸田は道元禅師と聖徳太子の教えに深く感銘し、その教えを経営にも実践した。聖徳太
子は「法華義疏」で「まさに他を正さんと欲するに、まず己身を正しうす」とあり、「こ
れ私の意なり」と書き添えている。
 人を導くものは、まず自ら己が身を正し
くせよ、ということ。人を動かすのは言葉では
なく、人格である。口でいくらよいことを言っても、その人の行動がこれに伴わなければ
、人を動かし、人を導くことはできない。
 
 会社においても、従業員に対する慈悲行はトップマネージメントが何よりもまず、自ら
が己身を正さなければならない、ということだ。
 自らが身をもって、教えることが大切であり、言葉の教育よりも、無言の感化の方が大
きいということだ。
 
 
 
●人間は一生のうち必ず一度は千載一遇の
好機にぶつかる
 
岩崎 弥太郎(三菱グループ創業者)
 
 弥太郎は「チャンスは、雲の中に一瞬現れた龍のようなもので、すぐ隠れてしまう。こ
れを捕まえるには、透徹した識見と周到なる注意、肝力が必要だが、凡人はこれをうまく
捕らえられず、逃してしまう」と話していた。
 
 さらに、事をなすには、次のように注意していた。
 
 「およそ、事を計画するに当たっては、上中下の三策を用意すればよい、という考えで
は十分ではない。もし、その三策が全てはずれたならば、もはやどうしようもないであろ
う。故に、私はさらに第四の方策を、考慮してあらゆる場合に、備えることにしている」
 
弥太郎が大胆であると同時に、いかに細心・緻密であったかを物語る言葉である。
 
 

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