前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

『オンライン/国難突破力講座』★日本リーダーパワー史(505)幕府側の外務大臣役(実質首相兼任)だった勝海舟の政治外交力を見習え⑦「政治には学問や知識は二の次 」「●八方美人主義はだめだ」

   

2014/05/27記事再録

  日本リーダーパワー史(505

いま米国の一国支配構造は崩れ、中国の躍進で国際秩序は大きく変化している。そんな「国際外交力競争の時代にあって、憲法改正、集団的自衛権の論議、TPP加入問題、尖閣問題などによる日中韓との対立の長期化や、外交的懸案が山積しているが、<外交力のある政治家が全くいないことが>が日本政治の最大の問題点なのだ。

明治維新前まで幕府側の外務大臣役(実質首相兼任)の勝海舟の政治外交力を見習え。⑦

「海舟先生氷川清話」(吉本襄 撰著 大文館書店 1933)にみる勝海舟「外交談」

◎政治には学問や知識は二番目

 

 政治をするには、学問や知識は、二番めで、至誠奉公の精神が、一番肝腎だ。ということは、しばしば話す通りであるが、旧幕時代でも、田沼(意次)という人は、世間ではかれこれいふけれども、やはり人物サ。とにかく政治の方針が一定しておったよ。

 この時分について、面白い話があるが、この頃、聖堂がひどく壊れて居たから、林大学頭から修理の事を申し出たが、その書面の中に「文宜公の廟云々」ということがあった。すると右筆らは集まって、文宜公(ふせんこう)とは、どんな神様であらうかといろいろ評議をしたけれども、時の智者を集めた右筆仲間で、文宣公(ふせんを知っているものがなかった。

そこで、文宣公とはどこの神だ、と付箋をして書面を返却した。大学頭はすぐに文宜公とは、唐土の仲尼(ちゅうじ)の事だといってやったけれども、それでもまだ分らない。そこで、大学頭もたまらず、仲尼とは「子白くの孔夫子の事だ」といった。それで右筆も漸く合点が行つたといふことだ。

 この話は旧平戸藩(ひらと)で明君と聞えた松浦静山公

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%BE%E6%B5%A6%E6%B8%85

 が、儒者を集めて、種々の講をさせて、それを筆記した『甲子夜話』という随筆で見たが、なかなか面白い。全体その時代の真面目は、正史よりも、かえってこんな飾り気のない随筆などで分るものださ。この話は、実に面白いではないか。右筆といえば、今の秘書官だが、宰相の片腕ともなるべきこの右筆が、孔子の名さへ知らないといえば、その人の学問もたかが知れる。

 これに較べると、今の秘書官などは、外国の語も二つや三つは読めるし、やれ法律とか、やれ経済とか、何一つとして知らないもののはない。しかるに、不思議のことは、孔子の名さへ知らない右筆を使った時の政治より、万能薬の秘書官を使う時の政治が、格別優れてもいないという事だ。

これも政治の根本たる至誠奉公といふ精神の関係だらうよ。

● 八方美人主義はだめじゃ

 またすべて世の中を治めるには、大量寛宏(かんこう) =心が広いこと。寛大=でなくては駄目サ。

八方美人主義では、その主義の奏効にばかり気を取られていては、国家のために大事業をやることは出来ないよ。戊辰戦争の事だつってさうだ。もしあの時、各藩に紛起した議論を一々気に懸けて、いづれえも当り障りのないようにしようとでも思ったなら、とても今日のごとき結果は、見られなかったゞらうよ。

自分に一定の見識がありさえすれば、いかなる事が起らうとも、一向構ふことはない。天下国家をして、正当な針路を進ませようという、大きい問題があるなら、区々たる小人の議論などは、聞かなくてもよいのだ。

 - 人物研究, 戦争報道, 現代史研究

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
★白石阿光作『近未来の<ガラパゴスジャパン>不条理ショートストーリー‼』★「戦争準備亡国論~国と国民はどちらが先に亡くなるか~」

近未来!不条理ショートストーリー<特別編> 「戦争準備亡国論~国と国民はどちらが …

『リーダーシップの日本近現代史』(313)★『コロナパニック/国難リテラシーの養い方④』「日本最強のリーダーシップ・児玉源太郎の国難突破力(9)『日露戦争で国が敗れるときは、日本も企業も個人もすべて絶滅する」との危機感を述べ、全責任を自己一身に負担し、その責任を内閣にも、参謀総長に分かたず、一身を国家に捧げる決心を以て立案し、実行する」と言明、決断、実行した』

    2013/06/16  /日本リ …

no image
児玉源太郎伝(1)●死亡記事ー『知謀の参謀総長、脳溢血で急死』●『児玉大将の死を痛惜す』〔時事新報〕

 児玉源太郎伝(1)  日露戦争で自ら地位を2階級(大臣→参謀次長)に …

no image
日本リーダーパワー史(450)「明治の国父・伊藤博文が明治維新を語る②「切腹覚悟でイギリスに密航し、開国派に180度転換した」

 日本リーダーパワー史(450)   「明治の国父・伊藤博文 …

no image
クイズ>国難の研究―誰が日本を潰したのか・東郷平八郎が日米戦争反対の海軍軍令部長をどなりつけた開戦のトラウマ

      &nbs …

no image
世界リーダーパワー史(940)ー注目される「米中間選挙」(11/6)と「トランプ大統領弾劾訴追」はどうなるのか、世界がかたずをのんで見守る(下)

注目される「米中間選挙」(11/6)と「トランプ大統領弾劾訴追」はどうなる(下) …

人気リクエスト再録『百歳学入門』(233) -『昭和の傑僧、山本玄峰(95歳)の一喝!➀」★『法に深切、人に親切、自身には辛節であれ』★『「正法(しょうほう)興るとき国栄え、正法廃るとき国滅ぶ」「葬儀は絶対に行なわざること」(遺書)

    2012/06/01  記事再録 百歳学入 …

『Z世代のための< 日本議会政治の父・尾崎行雄の日本政治史講義』★『150年かわらぬ日本の弱体内閣制度のバカの壁』★『 明治初年の日本新時代の 当時、参議や各省長官は30代で、西郷隆盛や大久保利通でも40歳前後、60代の者がなかった。 青年の意気は天を衝くばかり。40を過ぎた先輩は何事にも遠慮がちであった』

2012/03/16  日本リーダーパワー史(242)『日本 …

no image
『オンライン/「2015年終戦70 年講座』★『日本を代表する社会派ジャーナリスト・高杉晋吾氏が「植民地満州国の敗戦地獄」の少年体験を語る。

   2015/03/05    &nb …

no image
『リーダーシップの日本近現代史』(204)記事転載/『新しい女・青鞜』100年-日本女性はどこまで変わったのか①ー100年前の女性、結婚事情』★『働き方改革、女性の社会進出、少子化対策が叫ばれる現在とどこまで女性の地位は向上したのか』』

  2011/10/14  『新しい女・ …